あなたの名刺が、目の前でゴミ箱に捨てられたことはありますか。
わたしは、あります。
ある商工会議所さんを訪ねたとき、渡したばかりの名刺が、見ている前でぽいと捨てられました。顔から血の気が引きました。……でも、この事件が、逆に火をつけてくれたんです。「よし、絶対にあきらめないぞ」と。
47歳で独立した初月、売上は2,160円でした。背負った借金は1億6,523万9,180円。前の会社が倒産して、すべてを失ったあとの再出発です。友人知人をまわっても、交流会で名刺を配っても、自主開催のセミナーを開いても——仕事は、来ませんでした。
転機は、知人のひと言でした。「タクシーのセールスをやってたなら、飛び込みは得意でしょ? ためしに商工会議所をまわってみたら?」最初は断りました。プライドが邪魔をした。……数ヶ月後、もう一度背中を押されて、しぶしぶ約20箇所をまわってみたら、4箇所から声がかかったんです。
そこからでした。北海道内 約250箇所を、軽自動車でまわり続けた。やり方が定まった初年度は11本。翌年25本、3年目55本、4年目111本。独立から5年。気づけば、経営指導員さんに「北海道でNo.1のセミナー講師ですね」と言われるようになっていました。
ここで、ひとつ質問です。
あなたは今、「狩猟」をしていませんか。一発の大きな仕事を追いかけて、獲れたらまた次を一から探す——その繰り返しに、疲れていませんか。
わたしがたどり着いたのは、その逆でした。種をまき、畑を耕し、毎年実りが返ってくる。それが「農耕型・講師営業」です。売り込まなくても、「またお願いします」と、向こうから呼ばれる。
これは、才能の話ではありません。誰よりも不器用だった、わたしにできたのですから。
「農耕型・講師営業」とは何か
はっきり言います。待っているだけでは、仕事は来ません。「ホームページを作れば集客できる」は、残念ながら都市伝説です。
営業の世界には昔から「狩猟型」「農耕型」という言葉があります。わたしがやったのは、これを講師の仕事に持ち込んだだけです。ただし、北海道の約250箇所で、5年かけて。
狩猟をやめて、畑をつくる。種をまく。土を耕す。水をやる。手間はかかります。地味です。でも、いちど畑ができれば、毎年、実りのほうから返ってくる。商工会・商工会議所から「今年もお願いします」と、向こうから声がかかる状態。これが農耕型です。
やることは、難しくありません。
- 担当者さんと仲良くなる(御用聞き)。困りごとを聴き、できることは引き受ける。
- お礼は、その日のうちに。手書きのハガキと、お礼の動画。
- 月1のメルマガ、2〜3ヶ月に1度のハガキで、そっと思い出してもらう。
- 担当者・経営者の「脳内リスト」のトップに、自分を置いておく。
小さな接触を、コツコツ積み重ねる。それだけです。わたしたち小さな事業者が大手に勝つコツは、この「めんどくさいこと」を続けることに尽きます。
そしてもうひとつ。戦わない。都会はライバルが多い。だから、あえて都会から離れた商工会・商工会議所に絞る。そこには講師探しに困っている担当者さんがいて、セミナー会場には社長が何十人も座っています。自分で集客しなくても社長に出会える場所——それが商工団体です。
講師プロフィール
大本佳典(おおもと よしのり)
おおもと経営オフィス代表・中小企業専門の経営コンサルタント
46歳のとき、勤めていた会社が倒産。1億6,523万9,180円の連帯保証を背負う。経営コンサルタントに師事し、47歳で独立——しかし初月の売上は、わずか2,160円。
どん底からの再出発。最初は約20箇所に飛び込んで4箇所が受注。そこから北海道内 約250箇所(商工会議所・商工会・協同組合など)を軽自動車でまわり続けた。やり方が定まった初年度に11本、翌年25本、3年目55本、4年目111本。独立から5年で、毎年100本以上の講師・経営相談の依頼を受けるように。2019年には1年で899人の社長と会う。商工会議所の経営指導員からは「北海道でNo.1のセミナー講師ですね」と言われる。
この手法を伝えたい相手は、誰よりも、独立したばかりのあの頃の、わたし自身です。